2012年6月16日土曜日

何のためのMBA留学か

この1年のまとめでも書こうかと思ったけど、
この1年の自分の成長、アメリカ教育の良いところ、悪いところなどは
それぞれこれまでポストしてきたとおりで、
それらを再度まとめるようなことは面倒いのでやめました。

というわけで、そろそろClass of 2014の人達が本格的に出国しはじめる時期なので、
今回は新たなMBA留学生へのメッセージという意味もこめて書きたいと思います。

僕がこの1年、他のMBA生と過ごしてきた中で強く感じることが1つあります。
特に東アジア諸国からの派遣留学生に対して。
それは、20代あるいは30代前半の貴重な2年間を投資する場所として
ふさわしい目的と意気込みを持ってきているのか?ということ。

ネイティブの場合はMBAという学位をとること自体が目的の学生が多いです。
それはアメリカ社会が、出世するためにはMBAを持っていること自体を求めているから。
そういう慣習だからビジネス・スクールで何をするかということよりも、
MBAを取るということ自体が大事になります。
(アメリカ企業はGPAを気にするので、みんな勉強は頑張ります。為念)

じゃあアジアからの留学生は?
米国で就職する場合や、母国で外資系企業に就職する場合を除いて、
MBA自体に大した価値はない(少なくともローカル企業内の出世という意味においては)
というのは共通の文化です。
だからそういった学生については、少なくともMBAを取ること自体は目的にならないはずです。
まあ、海外MBAホルダーという肩書と周囲からの賞賛が得られれば
プライドと虚栄心は満たされるという考え方もあるかもしれませんが。

これまで何回も書いてきているように、僕は2年間勉強するために来ました。
これから組織の中枢で部下を持ちながら仕事をしてくためには、
知識も能力も経験も不足していると痛感しているので、
まずは知識と能力の基礎を確固たるものにしたいという思いで来ています。
「後の20年を買うために、今の5年間を犠牲にする」というのが僕の今の生き方です。
だからこの1年は、自分が楽になるような選択はあえてしてこなかったつもりです。

方や他の学生を見ていると、
中には同じような気持ちで本当に頑張っている学生がいる一方で、
(そのような学生は、成績の良し悪しに関わらず本当に尊敬してます)
常に楽な方に流れている学生がいるのも確か。
例えば授業の選択でも、自分の知っている科目ばかりを取る。
(学部時代の専攻と同じものや、過去の業務で背景知識を持っているものなど)
興味がある授業があっても宿題が多いと分かると、そこで取るのを止めてしまう。
確かに英語だけで未知の分野を学び、優秀な学生と競争するというのはとても大変なことです。
でも何故、「20代の貴重な時期における自己の成長の可能性」という価値が
「宿題の量とか背景知識の無さ」という基準に負けてしまうのか?
そして、自分の知っている科目を取って「実際の業務でやっていることとは違う」とか
「新しい学びがない」という文句を言っている。僕には全く理解のできない世界です。

もう1つ問題だと思うのが、ネットワーキング。
MBA留学の価値は?という質問に対して「グローバルなネットワーク」という
回答は決まり文句になってます。
だから、例え学業が良くなくても、遊んでばかりいても
「俺はネットワーキングを頑張っているんだ」と最もらしい理由で
自己正当化できてしまうわけです。

でも本当にネットワーキングに2年間の多くを費やすほどの価値があるのか?
僕はネットワーキングにそれほど価値があると思わないし、
少なくともネットワーキングがその他の基準に勝るべきではないと思ってます。

確かにみんなと遊ぶのは楽しいです。
各国から来た留学生と、洒落たバーで格好つけながら英語で話していると
それだけで何かワンランク上の生活をしているような気分にはなります。
ただ、そういう飲みの場で話される話題というのは各国共通で、
50%は下ネタ、40%は女の話、10%はスポーツと芸能。
果たしてそんな会話が将来どんな役に立つのか。

将来困ったときの相談相手やビジネスの相手候補になる可能性がある
という程度なら、たまの飲み会や普段のクラスでチームを組めば十分なはず。
それに、実際そんなことが起こる確率は低いので、
例えそのビジネス自体に価値があったとしても期待値は限りなく小さいです。
下ネタで盛り上がるために勉強やケースコンペで自己成長する機会を
逃しているのは何とももったいないと思います。

2年間休息に来たというのも極めてナンセンス。
これまで残業ばかりの生活であっても、2年間も休息が必要な20代なんていないはず。
自慢ではないけど、僕もピーク時は残業が月300時間を越えたときもあります。

よく「MBAホルダーなのに大したことないね」と言われている人や、
「MBA留学で学んだことは実際役に立たない」と言っているMBAホルダーが多いですが、
僕が1年間MBA留学した所感を述べると、そういうMBAホルダーは、
「2年間大して頑張りもせず、実際の業務に活かせるだけの成長をしていない」
だけだと思ってます。
これが日本企業がMBA留学派遣に消極的になりつつある一因だとも思います。

長々と書いてきましたが、結局のところ、
Class of 2014の皆さんには「2年間を投資するのにふさわしい目的」を持ち、
その目的を「2年間継続する」ということを大切にして欲しいというのがメッセージです。
例示ではネガティブな側面ばかりを強調しましたが、
多分この方がリアリティがあると思ったので、あえてそうしました。

今はやる気と希望に満ち溢れて出国を心待ちにしていると思いますが、
MBA留学でできることは本当に限られているので、
何が大切かということは常に心がけて欲しいと思っています。


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